Books&Family

Books&Family

家族、マネー、仕事・複業、それから本について書いていくよ!

新聞奨学生はオススメか?

自己紹介にも書いたけど、私は新聞奨学生をやっていた。
きっかけは高校二年生の冬、進学情報誌に新聞奨学生の広告が出ていたこと。
"学費は一年あたり100万円まで貸付、卒業まで継続で返済免除!" 
"学費とは別に月給12.5万円支給! 賞与有り!"
"住み込み又は寮完備!"
姉一人、妹二人がいて家が貧しかった私には最高としかいいようのない制度だ。これなら国公立大でなくても行ける、いやむしろ、土曜日も講義のある私大の方が都合がいい(夕刊配達があり夕方の受講が難しいので)と、法学部が名高い東京の私大に進学した。確かに可能性を自ら拡げることが出来たのだ。
私には友人と遊んだり、趣味を楽しむ時間が制約を受けることなど大した問題ではなかった。
むしろ新聞奨学生をしながら体育会系の部活に入り、学生らしい充実した活動も出来ていた。

 

成果を先に書くと、
・無事四年で卒業した
・大企業並みの給料が得られ、かつ希望した会社に就職できた
・貯金はもちろん、親に仕送りを出来るほどだった

ということで、挫折もなく大変上手くいったといえる。
もちろんこれは同じ新聞販売店で働いていた店長や同僚、またお客さんのおかげであり感謝の言葉もない。

また、当時私が選んだ制度(新聞社により制度は異なる)では、朝夕刊配達、集金有りながら週休二日で働きやすかったという要因もある。

 

しかし、では私がとても助かり、事実経済的なプラスの大きい新聞奨学生を人に勧めるかといえば、答えは必ずしもイエスではない。
否定的な理由はいくつもある。

・親に言われてやるというきっかけでは続かない
→これは継続出来ない奨学生の典型として、昔からしばしば言われていた。要は本人が自発的に、自分の進学のために応募するのでなければ駄目なのだ。いやいややらされて挫折するというのは、本人が深い傷を負うだけだろう。

・大学は高校までと違い、講義への出席は必須でないので、睡眠時間に制約のある新聞奨学生では通学習慣の維持が困難。
→雨降ったりすると、すぐ講義をサボる。サボりが簡単に習慣化してしまう。

・前の理由と同じだが、疲れて学習の維持が困難。
→私立文系大学や短大、専門学校なら何とかなるが、国立大、理系大や浪人生ではなかなか必要な学習が出来ず辛いだろう。医療系ではまず無理と思われる。また資格取得実習のためにまとまった休みが必要な場合(教員、福祉系など)は夕刊配達のない制度(その分経済的には劣る)を選ぶか、実習のある学年までに辞めざるを得ない。当然留学も無理。

新聞販売店は割とブラック企業。営業をやらされる/ノルマが課される。有給休暇はもちろん、人手不足だと週休もなかったりする。また集金できないお客さんがいると自腹を切らされる/切った方がマシということもあるかも。
→経営者や店員もそういう経験をしてきているので当然と思っている。また新聞販売店は新聞社とは別企業であり、昨今経営には余裕がない。経費のかかる奨学生に仕事を振るという発想はある意味自然な流れかもしれない。このあたりは完全に、配属された販売店により異なる。配属販売店は自分では選べないし、自分の意思では変えられない。

・時間の制約が大きい。
→遊びや学内の人間関係に制約が出るのはともかく、就職活動はかなり厳しい。事実、大学であれば就活のため、三年生で辞める奨学生も多い。

 

新聞奨学生は進学を経済的に可能にする人生の大チャンスである分、逆に挫折の可能性も高く人生が狂ってしまうリスクは大きい。世の中にはそれなりに沢山いると思うが、私自身は自分以外では新聞奨学生を四年間続け、留年せずに卒業した人間を一人だけしか見たことがない。
それでも新聞奨学生を選ぶなら、以下の点をクリアすることを推奨する。

・親ではなく、あくまでも本人の意思で選択すること。
・学習を重視する場合、大学なら三年生で辞める/留年前提で奨学生になること。そのために必要な資金を貯めておくこと。又は夕刊配達のない制度を選択すること。
浪人生は新聞奨学生を並立しないことを強く勧める。
・ ブラックな可能性の低い新聞社の制度を選択すること。営業の締め付けが厳しくない日経新聞がいいかもしれない。

 

脅すわけではないが、この記事を書きながら自分の奨学生時代を思い出す。あまりに眠く、意識が飛び気づいたらバイクで反対車線を走っていたこともある。集金にいったら酔っ払いにいきなり殴られたこともある。それはまだマシで、集金のため夜中にドア前でお客さんを待ち構えることもあった。はたまた狩りが趣味のオッサンに猪を丸ごと一頭渡されたことも(もちろん相手は好意のつもりだ)。元旦に雪が積もり、分厚いチラシの新聞を、転んでビビった後輩の分まで配ったりもした。私もコケた。
半面、お客さんには誤配を許していただいたり、契約を沢山してもらったり、時にはお小遣いをくれたり、嬉しく助かったことも数えきれない。貴重で自分を大きく成長させた経験だったことも間違いないのだ。あれがなければ今の自分もない。

 

新聞奨学生制度はとても人気と聞いている。家庭状況によっては大きなチャンスだ。日本育英会奨学金と異なり、卒業できれば貸付学費の返済が免除となり卒業時に借金がないのは非常に大きい。新聞奨学生となる決断をした若者にはぜひ頑張って欲しい。もちろん自分を潰すほど無理することは決してない。